この本を読むと、13世紀は本当に大変な時代だったんだなあということがわかる。モンゴル・西欧・イスラムの他に、ビザンツ帝国が絡んできて、その葛藤もまたおもしろい。ただ、書こうと思えばもっともっとおもしろく書けたんじゃないかなあと思うところもある。歴史なんでしょうがないのかもしれないけど。なので☆4つ。
本書は、ジンギス汗のフワーリズモ征服からマムルーク朝によるイェルサレム王国の破壊までを対象に、13世紀におけるモンゴルやイスラムの征服活動とそれに対する西欧キリスト教勢力の対応を「世界戦争」として描くものです。読んでみて感じたのは以下の点です。
(1) 筆者の基本的な視点はキリスト教勢力を中心に据えるものですが、モンゴルやマムルーク朝の内部事情等についてもシッカリとした紹介がされています。史料の整理などたいへんだったと思います。
(2) 全体として事実関係に関する記述が多く、どちらかと言えばノンフィクション風の仕上がりです。マイナーなエピソードも記載されていて興味深いのですが、イスラム史には全く門外漢の小生にとっては、読むのにえらく骨が折れました。
(3) ナポリ王シャルルによるビザンツ進攻の企てについて、個人的な野心ではなく、キプチャック汗国とマムルーク朝の連絡を遮断して西欧キリスト教圏を守ろうという大局的な戦略に基づくもの、という分析がなされています。全体として「堅い」出来の本ですが、殊この認識についてはナイーブとしか言いようがないのではないでしょうか。
いずれにせよ本書は、モンゴルやマムルークによる大激動の中、当時の人々が如何ほどの恐怖を味わったか、そしてそうした中でどのように生きようとしたか、鮮やかに描き出しています。勉強になります。