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フェルナン ブローデル

歴史入門

歴史入門

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定価 : ¥ 1,631
販売元 : 太田出版
発売日 : 1995-08

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¥ 1,631 歴史入門
“ブローデル史観”の精粋を濃縮


 例えば、マルクス主義の公式的な歴史観は、「これまでのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」(共産党宣言)と見做し、生産力と生産関係の矛盾が歴史の原動力となって社会を「進歩」させ、具体的には、ヘーゲルの歴史哲学を敷き写したような〈奴隷制?農奴制?資本制〉といった単線的な「発展段階説」に基づき、資本主義の位置付けを行ってきている。

 こうした歴史観に対して、フランス・アナール派歴史学の第一人者、フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel,1902?1985)は、「世界時間」「中心/中間/周辺地帯」など独創的な分析用具を駆使して資本主義の歴史を描出しており、本来であれば『物質文明・経済・資本主義』等を踏まえなければならないとは思うが、当書で“ブローデル史観”のエッセンスはくみ取ることができると考える。

 ここで、I.ウォーラーステイン (Immanuel Wallerstein,1930?)の首唱する「史的システムとしての資本主義」との兼ね合いであるけれども、ウォーラーステインは当該システムの濫觴を15世紀末のヨーロッパとしている。この推考に関して、ブローデルは両者の観点の一致は認めるものの、〈世界経済〉とは異質な〈世界=経済〉という独得の概念装置から若干の相違を本書で述べている。

 この両者の微妙な差異について、ウォーラーステインは『史的システムとしての資本主義』(川北稔訳)の中で自説を「私見」と言明しているが、私は、彼のマルクス主義(従属理論)への拘泥によるヨーロッパ中心的な視座がこの段差を生んでいるのではないか、と忖度する。なお、両者とも資本主義という翕然とした歴史的世界システムには、何らかの「不純物」が必要である、との認識は無論通底している。

 それはさておき、ブローデルの前掲書や大著『地中海』など、じっくりと時間をかけて読んでみたいものである。

アナール学派・社会史研究のエッセンス

著者Fernand Braudelは、言うまでもなくフランス社会史研究の中心であるアナール学派の領袖として著名な研究者である。「著者まえがき」によれば、本書は1976年にアメリカで行われた講演の原稿として書かれたものである。この講演そのものは著者の主著の一つ「物質文明・経済・資本主義」の刊行前に行われたが、その時点で同書はほぼ完成しており、その内容について紹介することを目的としていた。したがって、本書は「物質文明・経済・資本主義」の著者自身による要約と言うことが出来る。
本書で著者は、その特有の概念と言える「長期持続(longue duree)」という観点から、15-18世紀ヨーロッパの「日常性の歴史」を概観することを試みている。それは政治的に重要な個々の出来事の特殊性を記述する、あるいはその出来事相互の因果関係を追求していく、それまでの近代歴史学の方法論とは大きく異なるものである。著者の歴史に対するこうしたアプローチは時として、過去の出来事についての、あるいはそうした社会変化の原因についての、それまでの「常識的な理解」を覆す視点を提供する。というのも、著者はむしろ、こうした「常識」そのものが形成されてきた環境を問題とするからである。
著者の「この弁証法、つねに再審をせまられる、過去/現在、現在/過去の弁証法こそが、まさしく、歴史そのものの核心、その存在理由なのかもしれない(p.71)」、また「歴史学はつねに新たに始まり、それはつねにそれ自身を創り上げ、それ自身を乗り越えてゆく(p.167)」といった言葉は、歴史研究における課題を言い表すものとして、特に印象に残った。

簡明に示された資本主義に対する見方

 最近フェルナン・ブローデルの著作を薦める論評をいくつか見て、気になっていた。ただ、彼の主要作は、「地中海」と「物質文明・経済・資本主義」。読みたいとは思うものの、これらは何にしろ長大で、歴史学者でない者にとってはいきなり読み始めるには荷が重い。逡巡していたところ、この本の存在を知った。
 この本に関しては、歴史学者の主著にありがちな、膨大な歴史的事実を紐解きながら自説を検証していくという形態は取らず、彼の資本主義に対する認識が明確かつ簡略に描かれている。その見方自体、示唆に富むものであるし、興味深いパースペクティブを提供していると思う。私はまだ彼の主著を読んでいないので保証のほどはないが、彼の思想のエッセンスを無駄なく時間と労力をセーブしながら?!??得できたのではないかと思っている。ブローデルにかけることのできる時間の限られている人にお勧め。

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